白銅貨

白銅貨とは今ならつまり百円硬貨であり、もっと昔であれば五銭とか十銭硬貨である。
そのことをじつは今日ネットで調べて、はずかしながらはじめて知った。それまでの自分は白銅貨について、ぼやっといいかげんな、自分なりの思い込みで想像したものでしか認識してなかった。

もともと、たぶん子供のころに読んだ児童書に、白銅貨が出てきたのだった。今、それが何という本だったのか思い出そうとしたのだが、どうも思い出せない。
子供だか動物だか忘れたけど、主人公が着ているチョッキのポケットの中に、幾枚かの白銅貨が入っていて、それでお遣いに行くような話だっただろうか。
ポケットの中に手を入れて、白銅貨に触れる。つやの無い、塗布された白色が洗いざらしにされたような、かすかにざらつく渇いた手触り、使い込まれた金属の風合いがあって、お互いが擦れるとかすかな音を立てる、そんなそんな架空の硬貨を思い浮かべていたのだ。そういう硬貨が流通していた大昔のこと、あるいは作りごとの世界だと思っていたのだった。

ところがどうだ。たかが百円硬貨の、白銅貨があの色と重さと手触りに過ぎないものだったとは。誤解が解けるというのは、興ざめというか、あまり面白くないことでもある。