気温もさることながら、直に肌に触れる刃物のような風の冷たさが、心底堪える。この冬の、容赦のなさよ。膝から下の感覚がなくなって、体温がみるみるうちに下の地面へ逃げていくかのような、不安をともなうかのような寒さ。夜の駅前を行き交う人々は誰もが、やや怒ったような、余裕のないせかせかした足取りで、互いを避けつつ中央広場を通り過ぎていく。冷たい空気と甘い香りの混ざった店頭販売の店の前に、幾人かの列ができている。デパートの入口はすでにシャッターが半分ほど閉まっている。改札を抜けて階段を上ると、ホームには帰宅する人々、あるいは目的地へ向かう人々が、電車を待ってる。目的のない人、あるいは夜の時間を浮かれて過ごす人を見かけないので、電車の到着を待つ人々の行列から、いくぶんかの要素が間引かれたように見える。夜の駅が、朝の駅に少し似ている。夜の成分から、だらしない甘えの要素が減って、全体が少し目減りしたようになってる。