落ちぶれた

しかし彼は今や、生きる気力をうしない、ただ酒におぼれ、自堕落なその日暮らしをつづけていた。…みたいな、そんな文章があったとして、それを読んだならば、はあ、そうかなるほど、そんな風に生きている人なんだね、そういう感じね、と思うだろう。けど、よくよく考えたら、もしかするとその彼って、ほかでもない自分のことではないかと。いやいや僕はその日暮らしじゃありません、酒におぼれていませんと、胸を張って言えるのだろうか、それをまともに問われたら、きちんと反論できるのだろうか、実際は、けっこう怪しいのではないか。この紋切り型の表現が、思いのほかきれいに、自分にあてはまってしまうのではないか、そんなことをふいに思って、そうか、もしかすると今の自分こそ、零落とか淪落などという文言に近しい状態かもしれないぞと考えて、そうしたらなんだかおもしろい気分になってきた。