ローテンション

夕方前の時間に、いつものジムに行って、しかし今日は水泳ではなくて、バスタオルをもって、風呂、サウナ、水風呂を往復した。ここに通いはじめて四年経つけど、来店したのに水泳しなかったのは今日がはじめてだし、いつもはシャワー室しか使わないので、浴槽とかサウナを使ったのもこれが初だ。そもそもこの施設の、受付と更衣室とシャワー室とプール以外の場所がどうなっているのか、まったく知らない。ちょっと階段を降りていけば、いろんな器具やトレーニングルームなどが広がっているのだろうけど、一度も見たことがない。

サウナに入るのも久しぶりで、着替えて施設を出たあと、近くの喫茶店に入って、スマホを充電しつつ本を読んでいたのだが、まだサウナ余韻を残した身体の虚脱具合が、かなりのレベルで、この体内諸要素の喪失感は、運動直後とほぼ変わらないか場合によってはそれ以上かもしれないと思った。ちょっとこれ以上無理すると、そのまま体調崩すか風邪ひくかもしれない、そのくらいには全身がフワフワなまま、無防備で無警戒に外気と直に触れてる感じだった。二時間後には出勤しなければいけないのだが、このまま会社に戻るのは許されるのかしら、まるで酔っぱらってるような身体感覚に思えて、この心身で仕事の続きに戻るとしたら、それはそれでやけに背徳的快感をともなった新鮮さがあるように思った。

会社へ向かう道のりの途中もその気分は続いていた。もう皆が帰宅する時間にひとりだけ逆方向を歩いているぶん、余計にその気が高まった。このまま妙なテンションでオフィスに戻ることになったとしても、それはそれで何とかなるだろうか、などと考えながら、人並みに逆らって入場ゲートを潜った。フロアで人に会って一言二言交わすうちに、結局いつものリズムパターンが確固たる安定感で戻ってきた。なんだ、つまらないなあ、と思った。