ドライブ・マイ・カー(補)

「ドライブ・マイ・カー」について。部屋の中で、二人の裸体にあたる自然な光はきれいだったと思う。しかしこの映画の季節感は、よくわからない。西島秀俊も運転手の三浦透子も、服装はいつも一緒で、夏でもないけど真冬でもない格好で、西島が外で待つ運転手三浦の寒さを気にかけてあげるシーンもあったが、それにしては冬っぽさが、さほど感じられない。たぶん10月とか11月頃なのだろう。北海道に行ったら、急に真冬になった感じ。

西島秀俊が宿泊する旅館が、窓から海が見えてすごくいい。あんな旅館に泊まるから、季節感がよくわからなくなる(気持ちいい夏の感じがする)。広島はいい、知らない広島の、何の変哲もない景色がいい。

「加速も減速も非常になめらか」「車を大事にしてるのが伝わってくる」とか、自動車がそういった話のネタというか道具としてしか使われてないので、自動車そのものの、動きの面白さは少ない。というか映画で自動車の動きが面白いとしたら、それはやっぱりサスペンションに掛かる荷重が見えるような箱の動きとか、それはけっこう運転が下手であることの結果にあらわれるのではないか。上手いというのは、無駄な動きが少ないということだから。

タバコを喫うシーンが多くて、これは良かった。ウィスキーも美味しそうだった。タバコを喫って一息つく時間の魅力というのがある。行動も、会話さえも止まってしまう、しかし自分に閉じるわけでもなく、ただ二人で煙草の煙を見ている、その小休止のひとときの良さ。

しかし、タバコと酒は好きなのだろうけど、食事はそうでもないのか、キムチがやたらと並んでる韓国料理の食卓はあまり画面に捉えられないし、箸も進んでないし、美味しそうに食べてない。だいたい毎日夜遅くに家に帰るのに、西島秀俊が毎晩の夕食をどうしていたのかが、いっさい描かれないのは、なんとなく不足の感をおぼえる。