過去の人

自分が学生のとき、作った作品を先生から講評された経験はある。

いま思い返すと、自分の作品に対して言われたことを思い出すというよりも、なぜか第三者が俯瞰視点で見たような、妙に客観ぶった体験の記憶に塗り替えられたものとして思い出される。つまり、あの場にもし今の自分が立ち会っていても、やはり似たようなことを言うだろうな、と考えるような一連の出来事として思い出される。

正直言って今の自分が、当時の自分を理解するのは難しい。自分のことなのだから遡行してみれば当然ある程度はわかるけど、一定以上奥まで潜ると、そこから先へは進めないように感じる。ほとんどモンスターのような。あれはもう、どうしようもない、手の施しようがない、そんな生き物だと思う。

むしろ、あのときの先生の言葉に、より今の自分に近いものを感じてしまう。その言葉の凡庸さや届かなさも含めて、当然だ、それが社会というものだ、と思う。

しかし飼い慣らされないままであるのは、昔の自分の方なのだろうが。でも、あれでは自滅するだけだっただろうとも思う。でもそんな風に今の自分から思われてる昔の自分は、もしかすると気の毒でもある。その一方で、だったら今からでも遅くないから、復讐しに来ればいいじゃないかとも思う。