セルフレジ

ルフレジで、買い物かごから一つ一つ商品を拾い出してバーコードを読み取らせる。そのたびに、ピ、と音がする。すべての商品は、ピ、の音と交換されうる。金額をたしかめて会計ボタンを押す。これをやってると働いた実感がわく。セルフレジを利用すると、自分がそのスーパーマーケットの店員になったような錯覚に陥る。皆で同じ機械の前に背中を並べて俯き気味に作業してる、その様子はヘルプスタッフから一元監視されてる気がする。

大昔、レジスターという装置は、お金の入った引き出しと精算レシート出力機能をもったでかい電卓だった。商品に貼られた値札を見て、金額を打ち込んで、合計金額を客に告げて受取った金を引出しにしまい、お釣りとともに印字されたレシートを渡した。しかし時代と共にレジスターも進化する。バーコードが登場し、バーコードリーダーが登場し、バーコードを持たない商品ならば役割の割当ボタンにあらかじめ登録することができ、その形状やインターフェイスはどんどん洗練され、小銭や紙幣は投入口が独立し、計算も自動化され、精算間違いが起こるリスクは軽減され、操作も簡易でスピーディーになった。とはいえ機能や操作はどんどん増加、変容するので、そのレジ装置の果てしない仕様変更に、レジ担当者はひたすらついていかねばならない。新たな操作を習得することが、レジ打ちの仕事の中心になったとさえ言える。

しかし、その矛先が、スーパーのレジ打ち店員ではなく利用客に向くことになるとは。ずいぶん簡単で便利になったのだから、これからはレジ操作もひとりで出来なければスーパーマーケットの利用客たる資格はないということか。きっとコンビニとかも同じような仕組みに変わっていくのだろう。あらゆる買い物や手続きや申請に対応しているけど、操作はすべてセルフ。あらかじめ調査や練習が必要だったり、知ってなければ使えないサービスや機能があったり。ひたすら習得と内面化を求められ続ける仕組み。しかもああいうのって、何の前触れもなくある日とつぜんガラッと変わる。