遊ぶ

志賀直哉「暗夜行路」前半の、だらだらと毎夜毎夜、芸者と遊んでるだけの日々。昼過ぎまで眠って、起きてから出掛けて友人と一緒に飯を食い、碁を打ち、夕暮れ前には前日と同じ家に行って、そこの芸者らとしょうもない遊びで時間をつぶして、そのまま朝まで座敷にいて、帰って寝て、それを毎日くりかえす。果てしなく下らなくてひたすら無意味であるがゆえに、なんとも言えず味わい深いというか、ありもしない郷愁を誘うというか、ずっとこのままなら、一体どうなってしまうのだろうと思われるような、引き延ばされた停滞のとき。芸者はともかく、ひたすら果てしなく毎日を遊んでいたような過去なら、若い頃のほんの一時期のものとして、誰もが記憶にあるのではないか。その遊びのやりかたが、人それぞれだとしても、緩いぬるま湯のような時間のくりかえしに飽き飽きとしながらも、とめどもなくそれをくりかえしてしまう、その投げやりさのなかに閉じこもったような気分は。