自己根拠的持続

「画家のノート」でマチスはアンリ・ベルグソンの哲学に近い考えを示している。ベルグソンの『創造的進化』は一九〇七年に出版され、非常な成功を収めた。幾人かのマチス研究者が指摘したように、ベルグソンの思想は知識人たちの間で広く話題になっており、マチスもそれを知っていたに違いない。マチスが本能や、モチーフに感情を浸透させることを強調するのは、芸術家は「共感の作用によって対象の内部に自分自身を置く」ことで生の本能を捉えようとする、というベルグソンの思想を反映している。

ハイデン・ヘレーラ「マチスの肖像」111ページ

 

当時のマティスが感じていた問題意識、さらにそれ以前のおそらくは印象派の点描画家たち、あるいは同時代を並走していたピカソをはじめとするキュビストらが予感していた未来の明るみ。それらが、当時ベルクソンとどれほど響き合っていたのかには興味がある。そして、しばらく前から檜垣立哉ベルクソンの哲学」を読んでいる。

考えるほどに、20世紀絵画は知覚への掘り下げを重視していると思う。そこに超越的な価値の保証を求めず、それ自体であろうと、それ自体の根拠において成立しようとする運動に思われる。彼らを支えた、彼らの閃きや予感の後ろ盾になったのが、ベルクソンだったのではないかと、その手がかりを探すようにして読んでいる。