僕は字を書くのがじつに下手で、自分が書いた字を見るだけで嫌になってくるのだが、そんな自分が一年でもっとも多く字を書くのが、この師走の年賀状書きの時期である。とはいえ僕が書く年賀状なんてまったく大した枚数ではないのだが。

たまたま筆記具の中に安物の万年筆があったので、それを使って宛名書きをしてみた。万年筆なんてふだん全く使うことがないけど、そういう使い慣れないものをとつぜん使ってみると、これがとても面白い。まずいきなり、どっと大量にインクが出て紙面に溜まってハガキ一枚台無しになってしまって、そういうのが面白い。このコントロールの難しさ、予想のつかなさが面白いのだ。

ペン先から出るインクは、多すぎたり少なすぎたりして、その色合いや紙への残り方にインク自体の特性を強くあらわすので、字が上手いとか下手とかの意味合いを、そのことが薄めてしまうというか、下手は下手だけど、それはともかく書くのも書いた結果も、それなりに面白いと思える。ただしそう思ってるのは本人だけで、このハガキの字を見た人はやはり、単に「上手じゃない」と思うはず。
毎年、けっこううんざりした気分で宛名書きをするのだけど、今日はそうでもなかったので良かった。