突撃

アイヒマンとか、士官とか、警察官とか、官僚とか、下級官吏とか、誰でもいいけど、当時のドイツにおいて、彼らもおそらくは、勤務日はそれなりにうんざりした気分で朝を迎え、凍えるような外を歩き出して、電車だか自動車だかで出勤し、職場で勤務し、その後の人類の歴史に未曽有の傷跡を刻むことになる、その一環として機能するべく業務を遂行しながら、ときおり数日後に来たる休日を心に思い浮かべて、ただ待ち望んでいただろう。

上陸用舟艇の前方ドアが開いて、中の兵士たちが一斉にわーっと突撃する。突撃するとはつまり、ひたすら闇雲に、何の根拠も信じうる対象もなく、その場の勢い、空気、リズム、感覚、感情、それら全部によって、もはや生死線の向こうかもしれない地点へめがけて、ただ前に向かって進むということだ。なにしろ進む。目を瞑ったままでいいから進む。あのときの彼らのうちで、まだ眠い眼を開けられないまま、まだ半分夢の中で、今これが現実なのか夢なのか判然としないまま、身体だけで猛然と突撃したようなやつも、いたのだろうか。それで目的地にまで辿り着けたやつも、いたのだろうか。

デスクワークの管理職と死ぬかもしれない現場の兵士が、等しく思い焦がれるもの。それが来たるべき休日。寒すぎる今朝と明日、できるだけ、どうにか生き延びたい、それを願うもの。