内面化

理解しようとするな、理解して、腑分けして、内面におさめようとするな、そんなことをしても、何の意味もない。あなたはそれをすることで、自分の苦しみが減らせると思っている。それはたしかに、そうかもしれない。でも、そうだとしても、あなたの理解や内面化は、問題の根本的解決ではない。それはむしろ、あなたが問題に対して、あなた自身が変化することによって、問題そのものから身をかわせるようになっただけである。問題そのものは何も変わってない。ただ、あなたは変わった。あなたが問題に対して変わったことを、誰もが賞賛すると思う。問題に打ち勝った、問題を克服したと言って、賛美すると思う。でも、言いにくいけどそれは違う。あなたはたしかに、自分自身で問題を克服したのかもしれないけど、それはいわば、あなたが問題を口からごくんと丸呑みしただけだ。問題はあなたの外から内側へ移ったけど、何も変わらずに問題のままだ。あなたは問題を内面化して、外からの命令を内からの命令に変更し得たのだと思う。それは立派なことかもしれないが、でも言いにくいけどそれは、問題解決ではない。それは問題の場所が移動しただけだ。あなたはつまり、外からああしろこうしろと言われていたのが、自分からああしろこうしろと自分に言うようになったのだ。それはさすがに外の人間を喜ばせるだろうけど、問題の根本的解決ではない。むしろ悪化だ。あなたは、ついにあなたがあなた自身に対して、まるで外の人間みたいに、あれをやれこれをしろと、命令するようになってしまった。そして、それを、至上命題のように、聞いて実施するよう行動する人間になってしまったのだ。つまりあなたは、見事に大人になってしまった。素晴らしいことだ。内燃機関とは、つまりそのような、今のあなたのようなシステム生成作用のことを言うのかもしれない。あとは勝手に、あなたがたの内面であなたの大事なものを、あなたの判断で守れば良いのだ。そのために働き、命令にしたがい、ミッションを実行するのだ。そのような人間であるために、哲学を学び、人間の歴史に対して、たくさんの言い訳を準備してきたのだった。哲学を学ぼうとするな、理解して、腑分けして、内面におさめようとするな、そんなことをしても、何の意味もない。あなたはそれをすることで、自分の苦しみが減らせると思っている。それはたしかに、そうかもしれない。でも、そうだとしても、あなたの理解や内面化は、問題の根本的解決ではない。それはむしろ、あなたが問題に対して、あなた自身が変化することによって、問題そのものから身をかわせるようになっただけである。