眠りへ

電車の座席で眠っていて、目を覚ました。両隣にも前にも人がいて、電車の走る音が聴こえた。もう一度目を閉じて、目的の駅名を思い浮かべた。自分が会社に向かっているのか家に向かっているのかを忘れた。目を閉じたまま少し考えて、今が朝であることを思い出した。それでまた眠りに落ちようとした。これから眠りに入ることでもなく、これから現実がはじまることでもない、どっちつかずのまるで映画がはじまるときのような期待感がかすかに生じた。