昨夜のことだけど、会社を出たらいつもは誰もいないビル前のデッキに人だかりが出来ていて、人々の見上げる先の夜空に、断続的な爆発音とともに花火が上がっていたので、その場に立ち止まって自分もしばらく見ていた。その白やピンク色をした光が、広がっては消えてまた広がって、やがて夜の空を覆い尽くすかのように幾重にも重なり合って、それが何というか、あまりにも唐突で非現実的な、まるでアニメーションのような、いや、映像的なのではなくて、でも物理的な運動を直接感知しているのでもない、どっちつかずな捉え難い、納得しがたいものを見ている感じがした。それでもこんなふうに予想もしてなかったところに、不意打ちのように花火を見たというのは、それはそれで良かった。しばらくのあいだ音高く連続で打ちあがっていたのが、やがて静かになり、いつもの暗さが戻って、そうすると黒い人だかりも、ゆっくりとばらけていった。駅の方へ歩く人たちの群れにしたがっていつものように自分も歩く。