音楽の練習

土曜日の小学校の校舎から、吹奏楽部の練習する音が聴こえてくる。低、中、高音が重なり合って、ふわーっと広がるように音が大きくなり、やがて消えていく。これが立ち止まらずにはいられないほど魅惑的な音に聞こえる。管楽器の音が合わさったときの、音楽の過去から蓄積された深い記憶が呼び起こされるような感覚をおぼえる。

小学生の技術水準だからこそ、よけいに良く聴こえるのかもしれない。各楽器が、それぞれ勝手に、あまりきっちりとせずに、それぞれブレや幅のある音を出し合って、全体的に茫洋とした音の塊がふくらんでいく。緊張や集中力をあまり感じさせないような朦朧とした立ち上がりと拡散。

この音を以前から知っている。それを知っていたことの、それをわかってしまうことの、つまりこれが過去であることの驚きだろうか。自由は、規律、習慣、制限の枠を通してあらわれる。規律、習慣、制限は、自由のとめどもなさを制御することで、その音を知覚可能なものにする。

音楽の練習。土曜日の小学校の校舎の窓から降り落ちてくるもの。