最近、古いロックばかり聴いているみたいだけど、先日ベック・ボガート&アピスの未発表テイクを含むライブ盤がリリースされたのを聴いていて、BBAはやはりジェフベックが残した最良の仕事のひとつだと思った。

この時代と言えばレッド・ツェッペリンが隆盛を極めていたわけだが、BBAもツェッペリンのようなハードロック・フォーマットでありながら、各楽器の役割がツェッペリンとは根本的に違っていて、ラウドなサウンドのくせに、少なくとも音圧とか音の壁のようなもので圧倒するようなところはない。

70年代の音楽なので、今聴けばもちろん古い、古臭い音楽であるのは間違いない。しかしあらかじめそれを踏まえたうえで聴けば、ドカーンと単純に鳴ってるようでありながら、どの曲もたいへん緻密で、種々の旋律が収束するときの後始末に、すみずみにまで神経が行き届いているのがわかる。減衰しない音、制御されてない音、まったく楽器的ではない音に、強引に役割が押し付けられているのに、それが成り立っている。あたかも、無意味にあちこちへ飛び散り垂れ流れる大量の飛沫が、それでも最終的にはあるイメージを表現してしまうかのような感じで、どの細部もきちんと楽曲を構成する役割を担っている。

そのように演奏しようと思って実際にそうしたのが普通の演奏なら、BBAは事前の想定なくたまたま偶然そうなってる感じと、そのように演奏しようという思惑とのバランスが常にスリリングで想定外なままであるかのように、少なくとも自分にはそのように聴こえる。

とくにドラムのカーマイン・アピスは、ツーバスで異様に手数の多いドラムだが、頻繁に裏打ちを入れてくるこのスタイルが、昔から自分にはもろにツボで、BBAのファンクネス的な要素にこのドラムの果たす役割の大きさは、はかり知れないと思っている。