TOHOシネマズ シャンテで、ウェス・アンダーソン「アステロイド・シティ」(2023年)を観る。ウェス・アンダーソンの作品は、毎年のように観てる気がする。前作を観たのは、たしか去年じゃなかっただろうか。と思って調べたら、ほんとうに去年の1月だ。

とはいえ、その前は2018年であるし、思うほどたくさんの新作が矢継ぎ早に公開されているわけではなくて、単に自分が自宅で過去作を見返す機会が多かったがゆえの印象ではないかと思う。

しかし、あれ…もう新作なの?…との感なきにしもあらずだ。もはや「男はつらいよ」シリーズの新作を拝みに来たような感じもしなくもない。

とはいえ冒頭、機関車が走ってくるシーンなど、やはり盛り上がる。ウェス・アンダーソンの映画がはじまるよー!という感じ。たしかにもはや、新鮮味とか予期せぬ何かを期待するものではないのはわかってはいるので、いつものテイストがいつものクオリティで提供されるのを確認できれば、それはそれでいい。

まるで何もない砂漠から、ガススタンドやカフェやモーテルや建造中断されたハイウェイが立ち上がる。その景色がまるで日本の都下近郊都市の駅前開発を彷彿させもするというか、きっとアメリカの開発も、今も昔も、こんなものなのかな、とも思う。

砂漠の真ん中の辺鄙な街が舞台で、それ自体がひとつの舞台作品で、登場人物はその役柄を演じると共に演技者としての二重性をあらわにしていて、作家や舞台裏スタッフたちの思惑や意向があって、木に竹を継いだみたいな突拍子もないエピソードが展開されていて。

科学と物理学と天文学と天才少年少女たち、核実験と、未確認飛行物体、生物のように蠢く自動車のエンジン…これも憧憬こもった50年代アメリカの一景色なのだろうな…と思いながら観ていた。