最寄り駅に着いたら、空があきらかに怪しげな色に染まっていた。これはじきに降ってくるとみて、徒歩帰宅ではなくバス乗り場へ向かう。

バスが走り出しほどなくすると、何やら白いものが斜めの線を描き次々とへ落ちてきて、いきおいよく地面に跳ね返ってる。霰らしい。まるで夏の夕方みたいだ。

やがてそれはすぐ霰ではなくなる。降る様子が微妙に変わる。しかし、だったらこれは何だ。バスの窓の外をいくつも走る白い斜めの直線。大きなフロントウィンドウを忙しなくワイパーが動いている。雨ではない。だとしたら雪か。

最寄りの停留所でバスを降りて、急ぎ折りたたみ傘を挿すが、いきなり首筋から背中にかけて、極小な一粒の侵入を許した。冷たい何者かが背中を動く。あたりは見事なまでに、雪の降る景色になっている。

帰宅してしばらく経ち、外はすっかり暗くなる。時折パッとカメラのフラッシュが焚かれたように光って、数秒後に落雷の音が聴こえた。冬にはこんな日もあったかと思う。