デヴィッド・フィンチャーの映画「ザ・キラー」で、主人公の殺し屋が愛聴してたのはスミスだったけど、不特定多数の色々な人がいて、誰もが音楽を聴いていたり聴かなかったりする。で、ある人はどんな音楽を聴いているか?について、その人の服の趣味や好きな食べ物や、あるいはその人の性格は?お仕事は?お住まいは?家柄は?実家は太い?妻や夫はどんな人?とか、音楽の趣味とはそういう話に連なるようでいて、じつはそうでもない。その人の聴いてる音楽は必ずしもその人を説明するわけではない。その人がそれを望んでいるならまた別の話だけど、ふつうその人の聴く曲はその人の趣味嗜好や属性を必ずしもあらわさない。とはいえ、殺し屋がスミスを聴いている事実を知ったら、それは何となく面白いと感じるし、イヤホンしてる誰かのスマホにコールドプレイのジャケットが表示されてたら、それもそれで何か感じさせるものはあるだろう。たぶん音楽は記憶を上手に呼び起こすための道具でもあって、無秩序に流れる水の流れから飲める箇所だけ掬い取れるコップのようなものでもあるのだろう。その他人が使うコップの色や形状を見るのが、それなりに面白いのだろう。しかしその水の味は、本人以外の誰にもわからないのだろう。