来訪者と打ち合わせして、あまり得るところのなかった結果内容を簡単にまとめて、ずいぶん遅い時間にようやく会社を出た。駅へ向かいながら、体全体が重くて、一々気に障るような落ち着かないものが、がさがさとまといつく感じだった。こんなコンディションにこそ、お酒を飲むべきだなと思った。不愉快は不愉快なのだが、かすかにでも、この粘つくような、疲労感をともなう不快感がないと、体内で酒に反応してくれる成分のないままでは、取り入れるものが行き場を失うというか、かえって物足りなく思うものだ。思えばタバコもそうで、あれを喫わないなんて、風景から陰影を消してしまうようなものだとかつては思った。絶対にありえないと思っていたけど、結局やめてしまえたから、やれば出来るのだ。それはそうだが、でも失ったものが何だったかをきちんとおぼえておくことも必要だ。ある習慣を失くしたというだけではなくて、ある景色、ある時間そのものを失くしたはずなのだ。