自分の運転する車が、たくさんの車と一緒に、コース上を走っている。

長いストレートコースを、かなりの高速で走っているのだが、他車もほぼ同じ速度で走っているので、お互いの位置関係はかすかにしか変動しない。まるで全車が静止しているような、凪いだ海の上を、皆が微動もせず浮かんでいるようでもある。

やがて後ろから近付いてきた車が、ゆっくりと自車の横に並ぶ。そのままじわりじわりと前に出て、やがて自分のすぐ前をふさぐように、車体後部をこちらに見せつける。

自分はそれをしげしげと眺める。消灯したテールランプと、ガスを排出するマフラーの口と、高速回転するタイヤが、煤や汚れに塗れながら、こちらを見返している。

自動車を前から見ると、人の顔みたいに見えるけど、車を後ろから見ると、見てはいけない、たとえば女性のスカートの中を細部まで凝視してるような気がする。