毎朝、髭を剃るときに、首と肩の痛みに耐えねばならない。なぜ髭剃りすると痛むのか不思議に思ったのだけど、鏡の前で顎下を見るため上を向くときに痛むのだ。これまで無意識にやってきた動きなので、痛む理由がわからなかったのだけど、頭を後ろに反らすから痛い、そういうことだった。髭剃りする人は必ず一日に一度、目線はそのままにして上を向くのだ。

五十肩は肩や腕の動きによって痛みが増したり減ったりする。じっとしていれば痛くないけど、腕を一定の高さ以上に上げると痛い。たとえばボトルを持ち上げてグラスに注ぐという動作が、たいへん苦痛だったりする。

しかし神経痛は五十肩と違って、じっとしていても痛い。動かすとむしろ痛みが紛れるが、痛いことは痛い。どこが痛いのかを示すのも難しい。日によって、あるいは状態によって、痛みの箇所も変化する。痛みの中心が、気まぐれに二の腕を上下してるような感じだ。

肩や腕や首の角度のどこかに、痛みをあまり生じないフラットスポットがあるようで、それを常に探している。あ、今、あまり痛くない、ならば今この状態での、腕と肩の位置がフラットスポットのはずだと、そう思うのだが、同じ姿勢をしたつもりでも今度は痛かったりするので、なかなか発見が難しい。

おそらく快復するにしたがって、そんなことも忘れてしまうだろう。忘れてしまうとはつまり、肩や腕や首の全可動域がフラットスポットになるということだ。そしてフラットスポットという言葉そのものを忘れる。そんな愚かな考えをひたすら巡らせていた日々のことも、けろっと忘れてしまうのだろう。