毎朝、京浜東北線で一時間近くかけて通勤している。東海道線のほうが速いのはわかっているが、各駅停車の京浜東北線を利用するのが習慣になっている。電車は横浜方面へ向かうので、最初は混雑していてもじょじょに空いてきて、横浜が近づくと再び混み始める。運が良ければ、秋葉原とか東京あたりで座席が空くこともあるし、そうでなくても田町や品川あたりまでくれば、少しずつ空席も出始める。ところが今朝はなぜか座席がまったく空かず、結局一時間近く立ちっぱなしになった。京浜東北線の同じ路線に十年以上乗り続けてきて、こんなことはこれまで一、二度くらいしかない。ある意味、希少な体験とも言える。途中からなかばあきらめの気分で、ぼんやり窓の外を見ていた。それで川崎を過ぎたあたりで、外の景色にほとんどみおぼえがないことに気づいた。毎日乗ってる電車でも座っていればまるで景色を見てないのだ。それにしても、十年以上見過ごしていた景色なのか。その気があるなら、一時間ずっと、窓の外を見続けていたってかまわないのだ。しかしそういうことは実際しないものだな。