草叢 KUSAMURA


草叢 KUSAMURA [DVD]


凄い良かった。丁寧で丹精な映画だなーと思った。主演の速水今日子は美しい佇まいの女性だが、幸薄そうで、快楽的な要素がまるで感じられず、痛々しいような痩躯の裸体。吉岡睦雄も、失礼ながらひでーツラにヤセギスで、要するに二人とも、あまりにもリアルに「現実の男性と女性」っぽくて、エロい気分を楽しませてくれるような、ファンタジックな肉体じゃない。しかし、普段、所謂ピンク映画を、ほとんど観た事がないので大体どういうモンなのかわからず観てるのだけど、冒頭とかの性交シーンなど、すごい素晴らしいのではないだろうか?もう喜びが迸るような絡みで、幸福感が溢れ出して来る感じ。


物語は不況のきつさが、肌で感じられるような、真綿で首が絞まっていくような世間の閉塞感を背景に、夫の不貞に対して他人事のようにしか感じられない投げやりな気分とか、妊娠できない自分に対する自暴自棄な感覚とか、夫の子を孕んだ浮気相手とのやり取りとか、見事に「トカトントン」で「ヴィヨンの妻」な世界の生成に成功していて、要所要所での交接シーンが、時には喜びであり、時には怒りでありと、いろんな情動をきっかけにその都度激しく、花火のようにスパークする感じ。今時こんな映画あるのか?すげーとか思うが、でも繰り返すが、すごいよく出来てると思う。こうして書いていても、細かいシーンひとつひとつが感動的に思い出される。良い映画だ。こんなの、もっと若いとき見たらやばかった。