「POINT」Cornelius


point



今月のミュージックマガジンの特集が、数日後に新作「Sensuous」をリリース予定のコーネリアスなのだが、これはかなり読み応えのある面白い特集でした。久々に、ミュージックマガジン買ってよかったと思った。読んでて、あんまり馴染みがないはずの渋谷系サウンドに纏わる「90年代史」を自分の体験のように蘇らせてくれた。


…とはいえ、思えば「渋谷系」華やかなりし90年代初頭、僕は大学生であったにも関わらずまったくその手のサウンドを聴いておらず、前にも少し書いたが完全にクラシックロックばかりを聴き漁る日々であった。2ヶ月に一度発売の「GOLDWAX」を池袋のリブロで買って、週末には西新宿のダイカンプラザマンションの一室にあるような怪しい海賊盤屋を巡る日々…。周りはムサいおじさんか、バンド活動で人生狂い中の革ジャンのお兄さんしかいない…。まあコアな渋谷の人々だって、似たようなモンだったのだろうが、場所が西新宿か渋谷かというのの違いが、環境的にはでかいかもしれないが…。


なので、僕にとっては90年代に渋谷系ミュージシャンに対する思い入れはゼロ!と云い切れるし、実際、全くといって良いほど知らないんだが、コーネリアスだけは、まあなんとなく聴いていたと言う感じ。


そんなコーネリアスが、自分にとって本当の意味で重要な音楽になったのは、2001年のこの「POINT」だった。これは素晴らしかった。全然、どうってことない音なのに、ものすごい質感で、おおーリアリティとはこういうものか!!と思わされた。奇を衒わずとも、これほど確かな感触を聴き手に伝えることができるのだ。という事を実感させた。


プロトゥールズとか、ハードディスクレコーディングとか、よく判らないが、テクノロジーをあっさり軽やかに利用して、とても良い感じのサウンドの断片を、玩具のように弄べて、しかもそれを可能にしてくれるスタジオは、24時間使用可能で、その堆積していく、日当たりの良い、ゆったりとした時間の中で、無理なく納得いくまでじっくり組み上げられていった音たちの、最上級の結晶が「POINT」なのだろう。音の戯れに高じて、自己顕示/消失の快楽に淫していた(ようにもみえる)クリエイターが、このような音のリアリティに到達していく事が、とても素敵な事に思った。


ミュージックマガジンの特集でも、特に当時の、これは!と思うレコードの再発を連発してた「トラットリア・レーベル」に関する記事とか、すごい面白かったんだけど、でもやっぱり、90年代って何だったんだろう?という気にもなる。ああいう素敵なチョイスの数々というのは、なんか結局、その瞬間だけ「旬」な並びの面白さ!以上ではなくて、話としては面白いけど、やっぱり一枚の「POINT」の方が、大切なのではないか??という思いは感じる。ただ「POINT」の面白さは、「トラットリア・レーベル」のものすごい贅沢かつ無秩序かつ衒学的で嫌らしくもあるような、最大瞬間風速だけの音楽リストの速度性がなければ生まれてこない訳だから、ここいらも難しいところだ。