コンピュータの昔話〜90年代後半


パソコンが爆発的に普及したのは95年前後だろうが、僕はその頃、ほんとうにコンピュータとは無縁な生活であって、なにしろ当時、OSとかソフトウェアの意味もよく判らなかったし、バイト先の知り合いに「パソコンとかできる?」とか聞いて「うーんエクセルはちょっと触った事あるけど」とか言われて「…エクセルって何?それもパソコン?」とかマジで尋ねたりしていた。当時は決して珍しくないやり取りであったと思う。バイト先ですること無くて、脇のモニタでウゴウゴルーガに出てきたみかん星人がゆーっくり動いてるスクリーンセイバーをじーっと見つめていたりした。マウスにたまたま手が当たって、スクリーンセイバーが解除された事にびびって「すいません画面変わっちゃったんですけどいいんですか?」とか言った事もある。キーボードとかも全く打てなかった。なーんにも出来なかったし、興味もなかった。


その頃、もちろんまだ見たこともなかったけど、各種メディアからの情報で、なんかインターネットというものも、すごい文学的な、ロマンチックなもの。カッコいいものという印象があって、(スタジオボイスでエレクトリック・ノマド!とか言ってて、これからはhot javaが世界を大きく変えていくよ!とか書いてあって、山形浩生が「インターネットはもう年老いてしまった」とか書いてて、えー!もうかよ!僕まだ触った事もないよ!でもそういうのを「もうつまんなくなった」っていえるのがカッコいい!とか思った)


その頃に、友人がマッキントッシュを手に入れて、お前も買えよ。パソコン買うと世界が広がるよ。なんて言われて、そうかもなーなどと思いながら、そんな素敵な世界にアクセスしたいよなー。とは思いながらも、その金額のべらぼうさにびびったし、イマイチ物欲も出ず、なんかやっぱ、買うならとりあえずプレステだろ。というのが、僕の最終判断であった。


僕は「マッキントッシュは買わない。僕はプレイステーションを買うつもりだ。」と言って、パチンコで稼いで、実際プレイステーションを買った。(その後、Nintendo64ドリームキャストもパチンコで取った)


当時、発売されてからしばらくして、バイオハザードなんかが出て人気に火が付き始めた頃のプレイステーションが感じさせていたオーラというのも、これまた素敵であった。具体的にはイギリスのシグノシスが発売していた「Formula One」と「Wipeout XL」をやりたかった。単にそれだけだったのだが、正直、どう考えてもマッキントッシュとかより面白そうだと思っていた。こういう海外メーカーの(パッケージを見ただけで感じられる)ちょっと見たこと無いような新鮮な感触のソフトウェアが揃ってるのが、強烈に魅力的であった。結果「Wipeout XL」なんかは神のゲームであった訳だが、まあその話はまた別の機会に譲るが、いずれにせよその後も数年こんな感じで、いろいろビデオゲームやっていたら、数年後に僕が買ったPCも、完全に3Dゲームの稼動に特化したマシンとなってしまったのだが…。


はじめてパソコン(Windows95)に触れ、習得したのが98年末頃の事だった。デスクトップに「マイコンピュータ」というのがあって、これがすごく印象的だったのを覚えている。「これ自体がコンピュータなのに、なんでコンピュータの中にマイコンピュータ(私)があるのだ!?自分の中で、客観化された自分を見るという事??」などと思った。あるいは、もうこれ(デスクトップ)がインターネットの中を現していて、その中にマイコンピュータ(私)が浮かんでいるのかな?とも思った。ちょうど、IE4が出始めて、アクティブデスクトップとか言ってた頃である。


Emancipation

Emancipation

(「My Computer」収録)