Pearl's Girl (Tin There)


underworldというテクノっぽい音楽のグループがいる。僕はunderworldをそれほど熱心に聴いてきた訳ではないが、でもとりあえず1994年のdubnobasswithmyheadman以降、主要作品と思われるものに関しては一応、一通り聴いてきているとは思う、というと言い過ぎで、2002年のA Hundred Days Off以降は全然聴いてないから、まあ、そういう程度である。


でも、underworldのリスナーとしてはそんな程度の僕だが、かつてのunderworldは、僕にとってテクノ的衝撃のでかさは強かった。ことに96年のSecond Toughest in the Infantsですね。これはすごかった。まさに聴き狂いましたね。死ぬほど聴いた。


当時は2枚組で、2枚目にはかの有名な「Born Slippy」と「Rez」が収録されていたのであった。でも実のところ僕はこの2曲にはまったく興味なかった。


僕の興味はひとえにアルバム収録曲の「Rowla」と「Pearl's Girl」であった。もうほぼ、これだけと云っても過言ではない。この2曲だけで、96年全てと云っても良いくらいであった。この楽曲に含まれている全ての内実について知りたいとさえ思った。そのために何度も何度も聴いた。そしたらそのうち聴き飽きてしまったのだが、でもまた忘れた頃に懲りずに聴いた。数ヶ月くらい間を空けて聴ける状態になるのを待って、それから聴く。くらいのことはした。


ことに「Pearl's Girl」ですね。これは今聴いても、涙が出そうになる。underworldの曲の中で、桁外れに、群を抜いて好きで、というか、underworldの中で、とか言う以前に、この曲以上に、この曲的な良さを持つ曲は無いのでは?という意味において比較を絶して好きなのである。なんだか意味不明だが…


で、…そんなに大好きな「Pearl's Girl」であるが、でもとりあえず他の楽曲群において「Pearl's Girl」の次にすきな曲としては、「Tin Theme」という曲があって、これも超!!!大好きなのである。これは、オリジナルアルバム収録曲ではなく、じつはプレイステーションの「WipeOut XL」というゲームソフトの、BGMというか、CD-ROMの中に収録されていたunderworldの曲なのである。ゲームのSOUNDとして、この曲がプレイされるのである。…で、これも良かった。正直「Pearl's Girl」とどちらが好きかというと、かなり迷ってしまうくらい好きである。まあ「WipeOut XL」というゲーム自体が圧倒的に凄いゲームで、このゲームソフトをプレイできるというだけでプレイステーションの功績は計り知れないものがあるのだが、それはともかく、とにかくこのゲームに収録されていた「Tin Theme」は素晴らしかった。…で、当時の(90年代後半の)僕はSecond Toughest in the Infantsを聴いて感動して、プレステでWipeOut XLをやってTin Themeを聴いて感動してぶっ飛んで大層幸せな日々を過ごしていたのであった。(Jeff MillsとかJoey BeltramとかMyke Van DykeとかAphex Twinとかを聴き始めたのもこの頃。でもそのままテクノへまっしぐらとはならなかったのだ。むしろここ一年くらいの方がテクノ熱は高い…)


で、それはもうはるか大昔の過去の事なのでどうでも良いのだが、そのTin Themeという曲についてこの前ちょっとウェブで見てたら、驚いた事に、どうも「Tin Theme」という曲は何を隠そう「Pearl's Girl」のReMixであって、正式名称を「Pearl's Girl (Tin There)」というらしい、と云う事がわかったのだ!…っていうか「Tin Theme」じゃなくて「Tin There」じゃん!字が違うよ!かれこれ10年以上間違ってたじゃん!と思った。


で、それを収録しているミニアルバムがあるらしいので中古で買ってみた。それで改めて「Pearl's Girl (Tin There)」を聴いてみた。…おー!「Tin Theme」だ!と思った。というか、プレステのCD-ROMに収録されてたやつより格段に音が良い。いや音が良い悪い以前の、まったく別物というくらいぐらい豪勢な感触の曲だった。たしかに「Tin Theme」だけど、「Tin Theme」ってこうう曲だったんだ、と改めて知った。…プレステに収録されてたやつは収録サイズの問題なのか何なのかわからないが、もう酷く劣悪な音質なのだという事が、今日はじめてわかった。でも、僕にとって「Tin Theme」(タイトル間違っているけど)は、プレステ収録の方で完全に脳内メモリに刻み付けられてしまっているので、今更「音が良くなった」みたいな感じで生まれ変わられても困るんだよなという気持ちで、正直困惑している。唐突かもしれないが、なんかシスティーナ礼拝堂ミケランジェロの壁画が掃除選択されてピカピカの鮮やかな色彩で再公開されたときの、妙に気恥ずかしいようないたたまれないような気持ちを思い出してしまった。っていうか、この、やけにちゃんとした感じの「Pearl's Girl (Tin There)」はあんまり良いと思えない。ちゃんとし過ぎだと思った。ちゃんとし過ぎなのは、良くない事だとあらためて感じさせられた。