海の生物を思う


ひどく湿気の多い、ほとんど湿気に包まれているかのような状態の一日。こういう蒸した湿潤な感じを久々に感じた。このまま夏が近づくにつれ更に気温が高まり、鬱陶しいこの感じがより強まるのだろう。


ところで、コバンザメのようなヤツ…などと言うと、常に強いモノに付き従っているようなネガティブなイメージがあるけれど、実際のコバンザメは、そんなイジイジした感じの魚ではないように見える。(当たり前だが)…デカいサメの腹にくっ付いた状態で、サメの泳ぎの抵抗を自らも正面からまともに受けつつ、サメと同じように各ヒレをそれなりに動かしつつ、ワイヤーで引っ張られたグライダーのようにしている。結構、快適そうである。上方向からの太陽の光が差し込んでくるのを、上のサメの体で遮られていて、常に日陰の涼しい場所に居るようにも見える。ずっと軒下で暮らすような、ああいう人生があっても良いと思わせなくもない。…ところであの、宿主にくっ付いている頭の接合部分というのは、コバンザメが自らの意志で脱着可能な器官なのだろうか?そうだとしたら、力を加え続ける事で、ずっとくっついているのだろうか?あるいは、最初の一回に力を加えたら、その後、特に意識しなくてもずっとくっ付きっ放しだろうか?だとすれば、ここから離れようと思ったら、やはりまた、別の力を加えて離れられるのだろうか?まさか、その辺は自らの意志では無理!とか、そんな事はないだろうと思うのだけれども…。離れる瞬間をとらえた映像とかは無いのだろうか?っていうか、例えば宿主から離脱に成功した後、たった一人のコバンザメが海中空間を孤独に泳ぎつつ、すーっと高度を下げていく映像とか…そんな記録はあるのか?…どうなのか??


海の生き物の、自分の身を守る方法というのは、とてもバラエティ豊かだ。自分の身に付随している抽象的な「誇り」だとか「アイデンティティ」とかが全然希薄なので、ある意味いくらなんでもそれは…というような手段のヤツラが多いのが楽しい。コバンザメも然りだが、カラダの色を変えるだとか、自分だけ平気な仕様になっていて、他の連中が近づけない毒性のイソギンチャクの触手の懐に潜るとか、他所の貝殻を住処にするとか…。勿論恥じらいも何もなく、平然としている。それこそ、カラダの一部を取られたり、二つに裂かれてしまっても、そのまま平気でその後の生を生きるヤツラまで居る。


人間の中でも、精神的に強いタイプと弱いタイプが居る。強いタイプの中でも、もう海の生物に近いような得体の知れない「強さ」を持つヤツと、強いんだけれど、少なくとも海の生物とは違うな、と思わせる「強さ」を持つヤツが居る。


ちなみに僕は、やはり弱いタイプである。大多数がそうだと思うが。でも、毎日それなりに懸命に生きて、少しでも良い人生を送ろうと思っているのだと思うが、…なんか、何となく海の生物に近いような強さも持たなければいけないなあ、と思う事もあるかもしれない。


ほとんどヤバイ人の戯言みたいだが、まあ湿気のせいであろう。