昭和通り -Showa-Dori-


地下鉄を降りて階段を上がり歩いて会社のあるビルまで行く途中、でかい高速道路が頭上に掛かっていて、その下の車道も結構な車の行き交いがある。全てが排気ガスで薄汚れてくすんでいるが、空は晴れ渡っており日差しが初夏のように強く眩しく、気温も異様に高くて遠くに陽炎がたちそうなほどだ。暑い日だと思う。


歩道の脇には立ち入りを遮るフェンスとコインパーキングと自動販売機と大量のホームレスがいる。激しく汚れた裸の上半身を晒した男が大量の空き缶を踏み潰し続けている。「ギュシャ!!」という暴力の匂いを含んだ音が連続して聴こえるその脇を通り抜けつつ、歩道の先を遠くまで見通す。視界を遮るように小高く積み上げられているのはホームレスの住居と生活資材である。初夏を思わせる強烈な陽気で、そのうず高い積荷の脇を通り抜けるときには、強烈な悪臭が鼻の奥にまで突き上げる。浅黒い肌に垢が澱のように重なった上半身を晒す初老の男性が熟睡しているのを一瞥する。泥や垢に混じりながらも未だぬめりを失っていない内臓や血液が露出しているような何かが見えて一瞬たじろぐのだが、それは集積されてスーパーの大きなビニール袋に溜められた大量の残飯と、それを素手で食している男の姿である。それらすべてに降り注ぐ直射日光の強さを感じて微かに背筋を戦慄が走る


道の反対側には、また別の男が仰向けになって晴れ渡った空を見上げたような格好で寝ている。体を大きく捻じ曲げていて、上半身が自分の寝床から半ば歩道まではみ出してきており、道を行く人々は、その男性の顔のすぐ傍を行き来している。あの距離なら、歩く足音で目が醒めそうなものだが男は動かない。異様なまでに丈の短いスカートをはいた女子高生の二人組みがおしゃべりを続けながら、まったく何事もないかのようにその男性の真上を跨ぐように通り過ぎていく。…あのおっさん、目を開けてれば、いやでもあのスカートの中が見えるだろうなあと思う。そうとしか思えないような角度で、顎を真上に突き出し、晴れ渡った空を見上げた格好で寝ている。