「叫」


叫 プレミアム・エディション [DVD]


DVDにて観る。映画館でも観てるから二度目。一度目の鑑賞は3月頃だった。…思えばあの頃、個人的に体調を崩していた時期なのにまあ大丈夫だろうと無理して映画館に出かけたのだが、内容のあまりの壮絶さにぐったりして、出掛けた事をやや後悔してしまった事を思い出す。


この映画では役所広司の苛立ち方がとにかく半端ではない。CUREでの苛立ち方も結構すごかったが、今回はそれを遥かに凌駕している。とくに前半部は役所広司を観てるだけで只ならぬ緊張感に包まれてしまう。何がそんなに苛立たしいのか?と思うほどだ。一度目鑑賞後はその事ばかりが記憶に残った程だ。というか、その荒廃した感触が直接伝染して来る。(確かに優秀なホラー映画は人の気分を最強レベルにまでダウンさせるのだから、それは良いのだろうが)しかし、伊原剛志のなにげない一言や若い部下に対して、ほとんど脊椎反射に近いような反応で怒り狂う。最初、その怒りのスピードに結構面食らう程だ。「お前の意見なんかどうでもいいんだよ!!」「何だよ云いたい事があるならはっきり云えよ!!」「ふざけんな、知らないわけ無いだろ!!」とか云って相手をドつこうとして「吉岡さんヤバイですよマジヤバイですって!!」とか云って部下に止められたりする。…ほんとうに聴いててこっちがもううんざりして嫌になってくるくらい、ものすごく苛立っていて怒り狂ってるのである…


というかもう、全体的にこんなに荒涼としていて良いのか?と思わざるを得ない雰囲気がたちこめている。外科医の父親が高校生の息子を注射で殺すシーンの、あの息子が死ぬまでの間、僕は画面を観ていて完全に「今回はやばい」と思った。というか、途中で劇場を出ることになるかもと、本気で思った。席に座っていてすごい体調が悪くなってきてしまったのである(笑)でも通路から遠い席で、人の前を随分通り抜けないと脱出できないから絶望的な気分になった。。結局最後までみたけど。…その後も、あのビルから飛び降りるシーンの後、屋上から駆け下りてきた役所は、地面に叩きつけられたばかりで半死半生のおじさんの胸倉を掴み、まったく躊躇なく容赦なくタコ殴りに殴る蹴るの暴行を敢行するのである。そのおじさんの蒼白になった顔と出血などものともせず…。もう、この一連の暴力には、完全に参った。ひどい映画だと思った。正直目をつぶってしまった。…で、映画館では結局その後の展開で怖いシーンや不穏な感じがたちこめるのを察知すると目を瞑ってやり過ごしていたので、全体の所々を観ていないのでした(笑)…今回DVDで再確認したら、大体のシーンを思ったよりも観ていたようだったが。


しかし何度見ても、葉月里緒菜が最初にあらわれるシーンは、もうビビッて良いのか笑って良いのかわからない。ムンク「叫び」そのままの姿で、キャーーっと叫びながらぐーっと鏡に近づいてきて、役所に逃げられると、ガクッと中腰のままぼんやりしている。人間なのに、知能は虫並みではないかとも思われる(笑)。いや人間じゃないのか幽霊か。しかし2回目に観てより強く感じられたのは、赤い服の女はどうみても実在している感じだという事である。そりゃあ撮影しているのだから当たり前だが、でもやはり奇妙だ。実在しているのである。赤い服や白い肌がもう、光り輝くようなとてつもない美しさなのだが、しかしそれははっきりと実在の美しさである。


工事資材が置いてあるところで、ぬーっとクレーン移動で近づいてくる葉月里緒菜もそうだ。もうどう見ても、居るのだ。でも、ものすごくキレイなのである。…例えるのが難しいけど、CGに見えるような現実。という感じだろうか。なので、見てる方は葉月里緒菜が画面に居ると逆に安心して楽しめるところもある。むしろ本当に一番怖いのは、小西真奈美である。あのラストシーンの顔は何だよ!と云いたくなる。小西真奈美の顔って元々結構怖いのだ。2度目に見たら、あれはとても悲しげな悲鳴の顔に見えたので多少は腑に落ちた。というか少し感動すらしたが、それでも怖い。正直何度も見たい顔ではない。あの一発で、3月中はテレビで小西真奈美を見ると恐怖が蘇ってきたりもしたものだ。葉月里緒菜は、普通にキレイな女性に見えるのだが。。


単純に、何かが上手くいかないとか滑らかさを失うとか、トラブルの只中にいる事とかの気持ち悪さ、不安、不快、悲しみ、絶望感のような匂いそのものを体験しているようで、何度観ても後味はキツイ。…ちなみに、これを書いてる今、台風が関東地方に上陸してきており、只ならぬ勢いで窓ガラスがガタガタ云うのである(笑)。。超・怖いです。