「ピピロッティ リスト:からから」展


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表題の展覧会を観に原美術館へ。EVER Is Over All と題されたビデオ作品では、水色のワンピースを着た女性が花の雌しべのような形をした棒をもって、路上に止まっている車の側面のガラスを次々と割っていきながら楽しげに歩く、その一連の有様がスローモーションで捉えられる。壁にプロジェクターで投影された映像であるが、一部には別の角度に設置されたもうひとつのプロジェクターからのよくわからない映像も全体の一部に割り込むかのように投影されている。


特に何の新しさも驚きも感じないのは僕だけではないだろう。まったく取るに足りない、なんて事のない作品だと思う。でも、この青いワンピースの美しさや底抜けの笑顔や、車の窓ガラスめがけて棒を叩きつけるときの、女性が慣れない事やってるので変に力んでて妙にへっぴり腰ながら叩きつける喜びに夢中って感じのしぐさを観ている事自体は、とても楽しい事だ。…確かにこれは個人の作品なのだろうけど、でも今自分が感じたこういう印象って、おそらくわざわピピロッティ・リストという作品や文脈を気にする以前から、ちゃんと目の前に存在してる面白さで、わざわざ「ピピロッティ・リストの作品の良さ」と名付けられるべき面白さなのかどうか、かなり微妙な気もするのだけど、というか、そう思うのはなぜなのだろう?と自分に疑問も感じる。僕は、あの青いワンピースで嬉しそうに笑っている女性の姿に、何がしかの感情移入ができてしまうのだけど、それはもう自分が勝手にそうなってるだけで、その心の動き自体はもはや「ピピロッティ・リストの作品の良さ」とか「アート文脈」とかの範疇じゃなくて、勝手な「ぐるぐる回り」に過ぎないから。


でもその意味では、今日は久々に気持ちよく「ぐるぐる回り」できて、ちょっと「癒された」感じ。思ったよりもかなり楽しめた。でかいソファーと電気スタンドにのって現物大のテレビモニタに映る映像を観るインスタレーションも、それ自体は面白くも何ともないのだが、モニタに放映されてる映像自体はまあまあ面白い。というか、音楽が割といいかなと思った。