「リオ・ブラボー」


リオ・ブラボー [DVD]


しかしジョン・ウェインってヘンな顔をしたおっさんである。しかも何か、いつでも妙に直立不動というか、棒のように真っ直ぐ立っている感じ。あと穿いてるズボンの裾の短かさが妙に気になる。ウェスタンブーツを履くからあれで良いのだけど、くるぶしが見えそうな丈の短さで、サイズの違うズボンを穿いてるようにも見えてしまう。似たような格好した他の役者はそれほど変に見えないのだし、まだ小奇麗にする前の浮浪者みたいなディーン・マーティンでも相当カッコいいのと較べると、この妙な浮き上がり方は服装の問題ではなくジョン・ウェインと名付けられた人体固有の問題なのだろうと思われる。だからまあ、とりあえずあんまりカッコいいと思わないけど、なんか愛らしさは感じられるし、とりあえずそのままで良いからもう少しニコニコしろよ、と云いたくなる。


実際、冒頭でディーン・マーティンに渾身の力でぶっ叩かれて、後半でも平手打ちされて、ジョン・ウェインは始終踏んだり蹴ったりで、でもあんまり怒らないし、大らかで優しくて頼もしい感じにも見えなくもないけれど、どちらかというとあまりそういう事を気にしてないというか、興味の範囲外というか、他の事を考えているのか、あるいは何も考えていないのかわからず、何やら薄気味悪いほどで、アンジー・ディッキンソンのあまりにもわかりやすい誘惑の媚態に対する絵に描いたような紋切り型の態度や、バカの一つ覚えみたいに「逮捕してやるー」の決め台詞を繰り返してるところなども観てると、思い出されるのはまさにハロルド作石のゴリラーマンである。。


しかし鉢植え投げ→ライフル渡し→皆殺しという一連の流れは本当にすごい。今更こんな事書いてもしょうがないけど、すごいものはすごい。というか、リッキー・ネルソンが良いのだ。「なに?俺の事ー??」みたいなしらばっくれ方で時間を稼いで敵を瞬殺するという…。他にも「鍵はテーブルだよ」「ああ…そうだったな」体を避けた直後、敵を瞬殺するという…。…結局、男同士がツルむ面白さって、極限状況で一瞬だけ共有される一瞬のこれ見よがしなミエミエの大根芝居があって、直後に全てを帳消しにする銃撃!の良さ、って事なのだろう。


クライマックスの戦闘シーンでは、激戦のさなか、老人ウォルター・ブレナンも参戦するわ、挙句の果てにホテルの支配人なんかもやって来て、一同勢揃いみたいになってしまい、やや呆れ気味のジョン・ウェインが「次は誰が来るんだ」と言ったらリッキー・ネルソンが即座に「鉢を投げにくるんじゃない??」と言い返したのにはちょっと笑った。こういうちょっと笑わせる感じが多くてとても楽しめる。なんだかんだ言っても、ジョン・ウェインがご機嫌な笑顔で居てくれてるのも幸福な気分になれる。あと、あの歌のシーンですね。あれは泣ける。映画の中で歌が唄われるっていうのは、本当に良い事だと思う。それだけで満足する人もきっと沢山いるのではないか。僕なんかもその部類だ。