信号


歩行者用信号が赤く灯っていて、しかし車道に車は全く来ず静寂があたりを支配しているので、そのままさっさと渡ろうと思った。…のだが、ふと脇を見ると自転車に跨った警官がふたり居るのである。いくらなんでもおまわりさんの目の前でこれ見よがしに信号無視というのもも憚られるし、逆にあちら様にとっても目の前で平然と交通ルールを無視されては立つ瀬がないだろうし、まあちょっと待てば青に変わるだろうから、と少し立ち止まっていたのである。左右には僕と同じく横断歩道を渡ろうとする歩行者の男女が数名おり、おそらくは皆似たような考えらしく殊勝らしく佇んでいる。


歩行者用信号は赤く照らされ、路面を照らしている。…長い。幾らなんでもこの信号は長すぎないか?皆が訝しく思い始めたと同時に、警官の一人が佇む我々の後ろをすーっと通り過ぎて、反対側の端に設置されていた押しボタンを押した。そしたらたちまち信号の色が変化し始めて、青になりました。


…っていうか、なぜ誰もこの信号が押しボタン式だということを知らなかったの?毎日通勤通学で通ってるんでしょ?いや僕もだけど。