「デス・プルーフ in グラインドハウス」


デス・プルーフ プレミアム・エディション [DVD]


DVDで観た。でも前半ちょっと寝た。。「バニシング・ポイントが…」とか登場人物が平然と口にするっていうのは何か白ける気分にもなる。これからダッジ・チャレンジャーが出てきますよ、というのがあまりにも隠さずに説明されてしまうような…そこまで開き直って良いのでしょうか?映画の中で別の映画の名前があからさまに出てくるのって、やり方にもよるだろうけど本作ではあまりにも無防備過ぎる気はした。たとえば映画の中で登場人物が「お前デルフォニックスなんか聴くのか?」なんて音楽の趣味にちらっと触れるのなら、まだすごく良い感じに思えるのだけど。まあどっちも外部の趣味に依存してるんだから一緒じゃん、とも言えるけど、「バニシング・ポイントが…」と「お前デルフォニックス好きなの?」は、映画の中のセリフとしては決定的に違うと思う。


そのあたりも含めて、如何にも「受容してくれる場」に向けて作られた若干わざとらしい仕上がりの映画という印象。過去の映画の輝きを蘇生させたいという気持ちは、同時に過去のノスタルジーをみんなと共有したい、という気持ちでもあるから、そこに狙いを定めて、わざわざフィルムにノイズを入れたりもしたくなってしまう。美術にたとえれば、わざわざ画面に年月を経たかのような汚れを施したりヒビを入れて劣化させたり額縁を朽ち果てた感じにしたりしたくなるような、きっちり精巧にやればきっと人は喜んでくれるだろうと企む気持ちは僕にもよくわかる(笑)。


たとえば僕という人間にとって、映画とかってそんなに人と楽しく盛り上がれるような楽しい思い出とかは無いので、むしろ一人で大いに期待してたのに結果的に砂を噛む思いを味合わされるようなサギみたいなモノっていう実感の方が強いくらいだし、でも誰にも負けないくらい本数観てきたぜ!!的な気負いもないし、実際全然大した本数観てないし歴史的名作とか怪作とかゴミ作とかの歴史とかだってほとんど観てないので、その意味では語る資格もないという人間なので、ここで嬉々としてあらわれてる内容にも、一々反応できるかといったらできないのだけど、でもやっぱりこれは信頼に足るなあと思えたのは、やはり後半のクライマックスシーンでの、あのクルマの壊れ方が素晴らしかったからである。。「カー・アクションにおいて、クルマというのは、こういう風にひしゃげて、こういう風に屑鉄のスクラップに近づいてゆかねばならぬ!」という、結構厳しい判断の眼があるのが感じられる。だから崩落過程のかっこ良さが、かなり堂々とした感じで素晴らしい。壮絶なカー・アクションが続くのだが、その合間合間に、原型をとどめぬ程ひしゃげた車の前部の「顔」が垣間見えることで、ああこれはすごい、という満足感が事後的におそって来るのである。


停車してる、あるいは前進してくる車両にドカンと正面からあるいは背後から衝突するという、カーアクションにおけるもっとも工夫のない、一番単純なパターンを堂々と選択して、延々繰り返して、それをマトモに撮影してるところが自信に溢れている。本当に、二台が併走したり追突したりするだけで、そのたび毎に短く搭乗者たちの様子が挟み込まれるだけで、実際の撮影する前にイマドキっぽく小賢しくミニカー使ってシミュレーションしてとかそんなのとはまったく無縁な世界で…真っ白なダッジが、横からガンガンぶつけられて、それまで輝くように真っ白でキレイだった横っ腹に、ガンガン当てられてコスられて、思わずうわーっと言いたくなるくらい沢山の傷を無惨にも刻まれていく。でもそうかと思ったら今度は、さっきまで怒涛の攻撃を繰り返していた黒いシボレーが、今度は反対に泣き叫びながら、これでもかとばかりにガンガンにカマを掘られて掘られまくって、猛スピードで直進しながらも後ろの大部分をずたずたにされてしまって、リアサスがイカれてケツが不恰好に持ち上がっちゃうくらい酷い目に合わされてしまう。すべてが撮影とその後の編集に賭けられているキッチリ感は確かに見応えがあると思った。あとエンジン音もいいです。本当にああいう音がしてるのか知りませんが。