MERCEDES-BENZ GRAND PRIX CARS 1934-1955


メルセデス・ベンツ グランプリカーズ 1934‐1955


先日書店で見かけて、大変魅力的なイラストや写真が満載の本だったので購入。ここに掲載されているメルセデス独特の車体たちの姿。鈍く輝くアルミニウムのボディの異様なフォルムを見つめていると、それらひとつひとつが、まったく何の起源ももたず突如としてあらわれた悪夢のような異様な形態であるようにも見え、しかし同時にそれらが人間のなんとも奇妙で理解しがたい不思議な悪戦苦闘の具現化のようでもあり、頁をめくりながら不思議な感慨に包まれる。アメリカのクラシックカーとはまったく違う世界。よくもまあ、ここまで個性的でダークで異様なフォルムが次々と生み出されたものだと思う。まだざーっと図版とかだけ見ただけだけど、とりあえず1935年代のベルリン・ショーに展示されているW256号車の姿とかが誇らしげですごい。ハーケンクロイツの元でナチスドイツの威信を背負い静止しているまったく無機的なその車体。でも自らが自動車の歴史がはじまって以来、20世紀における最高のスペックとフォルムを有している事にはっきりと自覚的な感じもあって、その自信に満ち溢れていて、安らかに優雅に肢体を惜しげもなくさらして陶然としているかのような姿。