美術手帳2008年8月号「現代アート基礎演習」監修:岡崎乾二郎


夕食から続けてダラダラしてたら、そのまま軽く飲み過ぎて良い感じでほろ酔いになって、そのままグラスを持ってソファーに寝そべりつつ、先週か先々週くらいに買ってそのままマガジンラックに放り込んでおいた今月の美術手帳があったのでそれをひらいて読んでたら、それがすごく面白かったので、これはとりあえず今読んでる本を一旦中断して明日以降も引き続き読む事にした


…まだ最初〜「粘土の厚みで絵画を表現しよう」までしか読んでないのだが、とりあえず最初の色彩の話がすごく面白くて、何よりも自分の今抱えている問題の打破として、あえて実直に今、この49マスの色面構成を自分でもやってみようかなあという気になった。今の自分にとって、この色面構成をやる事の意義は、なによりもまず最初に「6色を選ぶ」というプロセスが不可避的に介在する事に大きいと感じられる。それをどう配置して、それがどう個性か?あるいは論理的透明性か???みたいな事はとりあえずどうでも良くて(いや、論理的透明性の話はものすごく面白かったし、たしかに重要なのは、まさにロジカルジャンプ!だと思うけど)、それよりは今の自分が、6色と限定されたとき何の色を選ぶのか?に異常に興味がある。(いやつまり最近の自分が制作時に、特に色の選択と予想する効果において、すごくそういう、いわゆる「二元論的対立」に引っ張られてる感じが強すぎたのではないか、という悪い予感があったからだと思うけど)それで、実際にその色面構成の作業をした場合、おそらく自分は今までしたくてもできなかった経験を味わえるのではないか?という微かな甘い期待がある。だから後日本当にやりそうです。…まあこれは、僕が元々、ある特定メーカーの水溶性色鉛筆という、全部そろえてもたかだか120色程度しかない画材を使っているから、そんな幅の中で最大限やりたいことをやるための実験としてやってみたい、という事なのだろうと思う。いや実際、色とはたしかに色の向かう先が未確定なまま示されている、その方向付けの充足していない意味としてだけ存在する、という感じはすごくよくわかるし、それを想像したときの心の揺らぎというか、悦びとしか言いようのないある種の愉悦感は堪えられないほどのものがあるのだが、その一方で、実際に絵を描くと言うことは、そうやすやすと簡単に、一色一色の色を等価なオブジェクトとしてとっかえひっかえできる程の自由は有してないのが現実で、それはもう物質的に、固かったり伸びなかったりして、言うことをきかない「色」の材質の抵抗感とか、期待を裏切る事だけが目的であるかのような物質性とひたすら付き合うのが、日常的に制作しながら生活する者の日常的感覚なので、そういう者にとって、まだ一度も使ったことのない色とか、経験不足や苦手意識のある色というのは、まさに、どういう動きをするのかさっぱり予測がつかなくて、ある意味こんなに不穏なものもないのだから。。そういう思いこみを、おそろしく虚構的に仕組んだ色面構成みたいなもので捉え直すことで、意外とかるく一蹴できて、変な先入観を少しでも剥がす事が出来て、気持ちを一旦フラットに変換できたら、実に素敵な事だと思う。


あと「粘土の厚みで…」のところでは「お弁当箱にゴハンやおかずを詰めるように粘土を詰めていく」と書かれていて、この文章も素晴らしく示唆的に思われた。それは要するに…たとえばモランディの静物の作品のイメージを粘土で再現するとき、間違っても「ケーキのスポンジの上にイチゴや生クリームを盛り上げていくような作り方はダメ」という事と同意で、絵画を組織するというのは基本的に、ケーキをデコレーションする事ではなくて、お弁当箱にゴハンやおかずを詰める事なんだ、というのが鮮やかに示されていると思う。それは自分の実体験に照らし合わせてみても明らかにそうで、お弁当箱にゴハンやおかずをつめるとき、常にうっすらと意識されている事は、この矩形のフレーム内に如何なるレイアウトが繰り広げられようとも、最終的には、これら全体に対して満遍なく「蓋」がかぶせられるのだ、という事で、つまりどれほど奇抜なレイアウトを施しても自由だが、ウィンナーやアスパラたちが突出してお弁当箱の矩形から飛び出しているような状態では、どうやっても「成立しない」という事を意味しており、お弁当をつめたくば、そのセオリーだけは守らざるを得ない、という固い「縛り」の在る事にほかならないのだ。その事を、あらためて、肝に銘じた。


(しかしそれにしても「他人になろう!」とか「Be A Superman!」とかの掛け声の、自分らしさとか自分探しを裏返したときの爽やかな軽快な心地よさっていうのは、懐かしさであると同時に、いつでもそこに戻っていきたい感覚でもある。…よくわからんけどとりあえずYMOのテクノドンを久々にライブラリに突っ込んでみたくなった。)(ワインを一本空けてしまった。。酔ってるから文章が長い。いつもだけど)