大西順子トリオ(Blue Note東京)


青山Blue Noteで大西順子ライブ。相変わらずの感じであるが、でもHow High The Moonで演奏がじょじょに熱を帯びてきて回転数が上がり始めてトップギアにシフトチェンジされてからの、ピアノの右手がもう勢いに任せて畳み掛けるように旋律を駆け下りていくところとかは、何度聴いてもぶっ飛ばされてしまう。本当にすごい。テンポをぐいっと上げてきたり逆に恐ろしいほど超スローにテンポが落ちてからのコテコテなブルース攻撃とかも素晴らしい。あらゆる局面の、そのたびごとにありったけの手数を叩き込んでこれでもかとばかりに曲を鞭打ち、音の粒立ちとテンションを最も緊張した状態のまま終局まで運んでいく。…そもそもジャズも、おそろしく複雑で有機的なリズムの多層構造を足したり引いたりして、そこにある筈のグルーヴを瞬時に宙吊りにしたりまたすぐさま粉砕したり、そういうきわめて激しい加工運動の繰り返しなのであって、そういう営みに全身全霊で反応するという意味ではテクノもブラックも何でもそれを聴くのに要請される感覚はかわらない。なので今ここでの演奏に圧倒されつつ、やはり、もっともっと僕を含む客席すべてが、今の3倍くらい機敏に起きている事態にビビッドに反応するべきだよなあと思った。やはり場がおとなしいので、どうしても空間全体が熱くなる感じはないのだが…。まあ僕だって地味な聴衆なので静かさに加担してる側なのだが、でも本当ならもっと無茶苦茶神経を研ぎ澄ませた状態での、一音も聞き逃さないという集中力をともなった上でのケダモノ的馬鹿騒ぎ状態になるべきで、これはまさにそういう風に体験すべき音楽だと思う。