商品を受け取りました


今朝、出かけようとしたら宅配便が来た。何かと思ったら、例のブツだった。これは以前から、たまたまインターネット上の、とあるポータルスペースにおいて、まるで啓示のように、おどろくべき破格の安値で販売されていたもので、ざっと見積もっておそらく通常価格のおおよそ1/3といった値段で放出されていた代物だ。まあ普通はあり得ない。早い者勝ち…いやそれ以前に何かの間違いである可能性の方が高い。日頃の行いの良さか神様のお導きかはわからないが、とにかく本来であれば極めて高価なそのブツを棚からぼた餅的なふいに降ってわいた幸運によって、しんじがたく安価に入手する事ができた。たぶんその権利を勝ち得た時点で勝利は確約されており、今思い返せば全てがまったくもって幸運のレールに乗っかったようなスムーズさでそのまままるごと大いなる存在からの祝福を受ける事態に等しかったのだし、でも僕がしたことなどただ前方の光を見つめたまましかるべきボタンをクリックしただけの事で、したがって非常に気持ちの良いお取引ができたのである。今、その代物は、すでに梱包をほどかれて、リビングの片隅に静かに設置されているはずだ。だって僕が、朝の慌ただしい時間だというのに、わざわざそこまでしてから家を出たのだから。自分でも驚くべき気持ちの入れようだ。でも梱包等で出たゴミを出がけにまとめてゴミ置き場まで移送する等、気配りに満ちた配慮も忘れてはいない事が伺われる。社会人としても合格だ。いずれにせよ、わかってもらえるまで何度でも言うが、あれは本当に幸運に包まれた良き買い物だったと、僕は確信しているのだ。


もちろんこの文章はある特定の人物に向けて書かれている。今日、おそらく僕より先に自宅に帰ってきて、夕食の支度をしようとしてふと目をやったリビングの片隅に置かれている、そのブツを最初に発見するであろう一人の女性に向けてだ。きっと君はそれを見て少なからず驚き、そしてもしかすると、それがほかならぬ僕によって購入された事に一瞬で気づき、その購入者の相も変わらぬ無計画・無謀な浪費癖に立腹するのかもしれない。しかし、この買い物はまったくそのような糾弾をこうむるべきものではなくて、むしろいたって健全で堅実で信頼のおけるどこにもやましいところなんか微塵もないような取引だったのだと、その事だけはこの場を借りて名言しておきたい。僕からは以上だ。今日はなるべく早く帰るつもりでいる。あとは必要に応じて話し合おう。