80年代のRCサクセション


RCサクセションの80年代のアルバムをいくつか聴いていたのだけど、今聴くと、思った以上にキーボード主体の楽曲ばかりであり、かなり多くの曲において、鍵盤担当の「G2」氏の色合いが強いのだということがわかる。というか、要するに80年代のRCサクセションの曲の「雰囲気」というか、ちょっとしたメロディの感触とか、主旋律を彩る印象的なフレーズとかは、ほとんど「G2」の手によるものであろう。RCサクセションの主役級メンバーといったら、ギターの仲井戸麗一とベースの小林和生というイメージがあるし、たしかにそれはそのとおりなのだろうが、しかし楽曲の大枠はG2が独占的に確定させているパターンが、ことのほか多いようだ。いわゆる「名曲」を除けば、アルバム内のちょっとした佳曲のちょっとした良さというのは、ほぼ例外なくG2の料理の手さばきによるものである。仲井戸麗一のギターはどの曲でも冴えたプレイを聴かせるが、それも構築された大枠の中で最良の仕事をしている、といった印象さえある。これは結構意外な発見であった。しかし、良くも悪くも大変ハイクオリティで破綻がなく、どこかで聴いたような「プロっぽい」匂いも漂わせ、ある意味やや退屈でもあるG2のアレンジを内側から食い破るような破壊的パワーで曲に無数の亀裂を生じさせているのが、有名なホーン・ユニットの、ほかでもないブルーデイ・ホーンズの二人(片山広明・梅津和時)なのであった。この二人はRCサクセションというグループ内においてある意味もっとも重要な役割を担い続けたと言っても過言ではなかろう。それはバンドがどのような状態であれ、絶えず外側からリズムをかぶせ、フレーズをかく乱させ、垣間見えた調和をでたらめな不協和音によってたえずなし崩しにさせ、その一貫した姿勢そのもので、バンドを常に活気付かせ、緊張させ続けたという意味で、まさに稀有な存在であったといえるのではないか。たとえば今、あらためてFeel So Bad収録の「自由」を聴いてみると、センセーショナルで暴力的な歌詞の世界よりまず先に、とてつもなく分厚くてファンキーなホーンのフレージングがいきなり鼓膜に直接襲い掛かるかのような勢いで炸裂するのを感じる。「自由」はおそらく日本の音楽グループが生み出した最高級のブラス・ロック・ナンバーである。あるいはライブ盤Tears Of A Crownの冒頭、IN THE MIDNIGHT HOUR からSweet Soul Music~Strawberry Fields Forever にかけての圧倒的な展開を聴けば、ここで語っている事を一々読まなくても、ブルーデイ・ホーンズのすばらしさが、そしてあらゆる要素が渾然となったバンドサウンドの瑞々しい輝きが、一瞬で身体的に直感されるだろう。。いやほんとうに、こんな分厚くて豊穣な音を出すグループがかつていたのだということが、にわかには信じられない気持ちになってくる。