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伊丹十三「女たちよ!」を読んでたら、冒頭でスパゲッティが日本に入って来たのは何時頃のことかと書かれていて、永井荷風や、漱石三四郎にはすでにそれっぽいことが書かれているとあって、「これらの小説が書かれたのは、およそ、六十年くらい昔のことであるが」とある。それでつい、いやいやそんなはずは…と思ったが、しかしよく考えたらこの本の刊行年は1969年で、三四郎刊行は1909年とのことだからまさに60年前である。僕が読んでいるこれが、すでに50年前の本なのだ。

RCサクセションに「long time ago」という曲があって、その歌詞には「44年前、原子爆弾が落ちてきて…」とある。この曲を僕がはじめて聴いたのは1987年だから、それからすでに33年経っている。

こんな話ばかりしていて、よく飽きませんねと言われそうだ。ふと気づいたらこの文章自体がさらに時間を経て再び自分の前にあらわれるだろう。具体的な年月日を書いておくのは面白い。しばらく年月を経ると、直接的に身体に刺さる棘みたいな厳しいものになる。強い違和感をもたらすものになる。書いてるときはそれが過程だとは思ってないのに、実際はそうじゃない、そのことが剥き出しになることの違和感だ。