Yes-No


今なんていったの、ほかのこと考えて、君の事、ぼんやり見てた…的な曲はオフコースの「SELECTION1978-81」の一曲目。これを初めて聴いたのは小学生のとき。よくよく考えると、今から30年前の実家にはロックやポップスのレコードは一枚も存在していなかったし、演歌もなかった。両親の趣味として、そうだった。いや両親の趣味の無さの具現化として、そのような状態だった。このLPレコードは従姉妹が家にしばらく滞在していたときに、置いていったもの。まずSELECTIONという英語を知ったのが生まれてはじめて。このジャケットの(白黒写真でもなくイラストでも何でもないイメージの)こういうイメージ図を見たのも生まれてはじめて。レコードをかけて針を落とすと「Yes-No」が始まる。いまなんていったの?他の事考えて、君の事ぼんやりみてた、という出だしの言葉を聴くと、今でもそれをはじめて聴いたときの30年近く前のことがまざまざと思い出されてしまう。おそろしいことに。ほらまた笑うんだね。ふざけているみたいに。今、君の匂いがしてる。おどろくべき官能性に当時はただ呆然としていた。いや呆然としていたことすら、自分で気づいていなかったであろう。ああ、そうだね、少し寒いね、今日はありがとう、明日、あえるね。青春のポップソングというものがこの世には存在しており、皆がこれらやあれらを思い思いに消費しているのだという驚きを小学生の僕は当時、存分に驚いたのだ。孤独すらもが愉悦であることの驚きを、小学生のときから存分に味わい、来るべき未来のわかりきった明るさに身震いするような感動をおぼえた。期待に打ち震えたのだ。これから僕の身にもあの、コカ・コーラのCMのようなはじけた人生が待っているという事に!!