砂とスコッチ


松本零士「戦場まんがシリーズ」全9巻を、ヤフオクで思わず買ってしまったのが今日届いた。小学生のときに読んで印象的だった「砂とスコッチ」をふいに思い出して、なぜかむしょうに再読したくなったから。


大量のスコッチを積載していたイギリスの補給機が過重量で砂漠に墜落して、あたり一面にスコッチの瓶が散乱する。生き残った二人のイギリス兵が、後半不時着するドイツ兵のメッサーシュミットの燃料タンクにスコッチを入れて飛行機を動かして砂漠を脱出しようとする話。


僕はスコッチというものを、これではじめて知ったのだった。きっと、信じられないくらい、美味いものなのだろうと想像したものだ。


何十年ぶりかに再読したが、…まあ、これはさすがに荒唐無稽すぎるというか、今読んでも、まあ、こんなもんかという感じだったが、でも松本零士の絵は好きだ。好きというか、ほとんど原体験的なものだ。


しかし「戦場まんがシリーズ」は当時は戦争礼賛だとかなんとか言われたようだが、とりいそぎ数編読んでみて、どの話にも共通するのは、ちょっと戦時下とは思えないような、一応軍人であるはずの各登場人物たちの、異様にだらだらして、けじめもしまりもない、止まった時間の感覚というか、停滞感、待機の状態、することが無くてひたすらぼんやりしているだけの時間、みたいな、そういう空気が強くあり、これは「戦場」的な世界とはまた別の、松本零士的世界(70年代的世界?)の、もうひとつの独特な特長だと思う。