スティーリー・ダンの「Aja」後半、Steve Gaddが大活躍する、おそらくスティーリー・ダンの全楽曲の中でも最高峰に位置すると思われる瞬間、あの完璧な熱さがそのまま凍結されたかのような凄まじいドラムが聴かれる箇所は、デトロイト・テクノのアーティストAnthony "Shake" Shakirによって"Arise"という曲でサンプリングされている。
"Arise"は2010年にリリースされたDerrick MayのMIX CD"Heart Beat Presents Mixed By Derrick May"のオープニングを飾るトラックに採用されていて、当時リリースされたばかりのこのMIX-CDに夢中になった僕は、それでAnthony "Shake" Shakirの名を知り、1994-2009までまとめられたAnthony Shakirの企画盤も買い求め、3枚組CDのDisk1に収録されたいた"Arise"を、それこそ何度も繰り返し聴いたにもかかわらず、未だその元ネタが「Aja」だとは気付いてない…。
じつは最近なのだ。スティーリー・ダンを何度も繰り返し聴いてるうちに、あれ、もしかしてこれは…となって、あらためて聴いてみたら、モロにそうだった。これまでどちらも、さんざん聴いてきたのに、迂闊というかひどい話じゃないか。でも、それゆえにというか、感謝というか、そうそう、こういうことだよ、こういうことをしたいと、誰もが思うはずなのだよと、その初期衝動的な何かを思い出させてくれたのが"Arise"なのだった。こうやってひたすら乱暴に無骨にブン回すことこそが、音楽の原初的なパワーなのだと気づかせてくれた。
しかし、まだしばらくは、隠居老人のように配信音源を取っ換え引っ換えしながら音の違いを聴き較べる日々が続きそうだが…。