オレンジ


オレンジはなぜあれほど強烈な香りと濃厚な味がするのだろう?オレンジも果物の一種であり、果物である以上は植物で、つまりこの世に存在する有機体、生き物のひとつのはずだ。にもかかわらず、なぜ食べると、あのような味がするのか?オレンジを食べると、それはそれは甘く、ほのかな酸味と濃厚な香りが合わさって口内いっぱいに広がる。唇や指先にまで、それは広がる。なぜ、こんなに甘く美味なのか?オレンジという物質が、このような味をたたえてこの世に存在しているという、このような資質をもって生まれてきたという、その事になんの意味があるのだろうか?種子を運んでもらい種を繁栄させるための遺伝子レベルの知恵だとしても、いくらなんでも人間をピンポイントで喜ばせすぎではないか?正直、こんな味がすることの意味がわからない。こんな味の生き物がいて良いのだろうか?というか、もはやこれでは、生き物とは言えないのではなかろうか?というか、オレンジを生き物だとブログに書いているのはさすがに世界中に僕一人ではなかろうか?それにしてもなんと甘く薫り高いことだろう。つづけて二つ食べてしまった。食べ終わって、皮をティッシュにくるんでゴミ箱に捨てたが、ゴミ箱から猛烈なオレンジの香りが漂ってきやしないだろうか?手がベタベタになったので、さっき洗面所で石鹸を使ってしっかりと手を洗ったのだが、今この時点で、まだ僕の両手からはオレンジのすさまじいまでの芳香が漂ってくるのだ。マウスもキーボードも傍らに積んである数枚のCDケースも、すべてオレンジの匂いがする。思わず両手で顔の下半分を覆って、思い切り息を吸い込んでみる。頭の中がすべて、オレンジの香りに満たされて、視界が霞み、意識が薄れる。