倉敷→岡山→帰る


午前十一時くらいに倉敷につく。とにかく暑い。とりあえず食事する。ついたくさんお酒も飲んでしまう。でも店を出たら炎天下でほろ酔いなどすぐ吹っ飛ぶ。酷い汗。大原美術館の所蔵作品群はは大変見ごたえのあるものすごいものであった。閉館まで居て、相当くたびれた。ちなみにその日は偶然、倉敷の夏祭りの日で、往来はものすごい人と出店で、まさに祭りの夜というか、皆が大騒ぎしている状態でした。六時から食事へ。またしっかりと飲む。一時間半ほど居て、お会計する。通りの浮かれた雰囲気の中を泳ぐような気分でホテルまで戻る。


翌日は岡山市立美術館。池田遙邨の絵日記などを観る。なかなか面白かった。その後倉敷アイビースクエア内の倉紡記念館と児島虎次郎記念館へ。こちらは建物の感じとかも含めて大変面白かった。まさに近代日本という感じ。


電車で岡山駅まで移動して、岡山県立美術館で「パスキンとエコール・ド・パリ展」を観る。パスキン鉛筆素描巧い。またモロッコマルセイユなどの風景をさささっとスケッチしたようなものが多い。なんというか、芸術とか、ある種の冴えみたいなものと、それ以外の色々な、雑多な事(興味、視線の先・・・)の優先順位がみな等価で、そのゆるさがいい感じ。挿絵とかはその枠組みの中で非常に巧みでかえってあまり面白くない。


なんだか今回の旅行ではまた色々絵を観たけど、普通に何かを観て描いてる絵ばかりに目がいってしまったような。


倉敷はまさに観光地で、というか倉敷ぜんたいが、倉紡という超巨大企業の庭に遊びに来たようなものかもしれない。倉紡記念館はすごかった。明治大正期の工場施設とかあまりにもすごくてマジでびびる。結局ほぼ全部戦争で燃えるし。児島虎次郎もすごい。あぁ人間ってすごいなあと思うし、ようやるわ、とも思う。まったく、ちっぽけで空しいものだよ。僕は小さな人間に過ぎないのさ。でも同じようにちっぽけな君と一緒にいられるなら、一人よりも幾分かはマシかもね、というような人生が良いのだけれど、そんなことを思う事が可能なのも、近代日本のおかげでございます。しかしそれにしても、ほんとうに猛烈に暑かった。


でも、やっぱり旅行先には温泉があった方がいいね!と思った。岡山県は至急温泉を調達していただきたい。


帰りは17:15発のJAL1684便でボーイング737-800である。行きよりはでかい機体だったが、気流はそれほど安定しておらず思ったよりも揺れた。下界も行きほどはよく見えなかった。しかし雲はやはりうつくしかった。東京に近づくにつれて夕暮れのオレンジ色が青色と混ざり始めた。巨大な積乱雲の中腹で、時折遠くでカメラのフラッシュを焚いたような稲光が走るのを見た。着陸の時間に近づくと共に、空は濁ったようなダークグレーへと変わり、東京の湾岸は湿度の分厚い層越しにネオンのライトをぽつぽつと灯し始めた。


機体は何度も傾き、侵入角度を慎重に調整しながら滑走路へと近づきつつあるようだったが、客席からはどこが滑走路なのか例によってまったくわからない。埋立られた港湾の四角い形状を見つめながら、機体の真下がまだ海なのでまだ着陸しないだろうと思ってたら、すっと地上となり、その後間髪入れずに、どしんと着陸して、かすかに片車輪だけ跳ねて、しかし再度両足が地面に着いて、また逆噴射の圧力を身体に感じた。結局、あっという間に東京に戻ってしまった。昨日から今日にかけて、ほんとうに旅行してたのだっけ?