醒める


四日前も三日前も二日前も昨日も今日も飲んだ。自分が酒を飲んで酔いつつあるのを、差し向かいの相手が見ている。それを自分は知っている。あるいは、相手も飲んで、少しずつ酔いつつあるのを、自分が見ていて、相手もそれに意識的である。で、向かい合って、自分の身体を打ち消そうとしている。酒を飲むと一時的に、自分の体が消えるだろう。かりに家に閉じこもって、一日中寝そべっていたとしても、自分の体を立ち上げておくのは疲れることだよ。疲れることばかり。それがあるからお互い、相手を見ながら、酒を飲むのだ。


しかしまあ、お酒というのは、どう書くにせよ、どうしてもおっさん臭いものになってしまうのだなあと思った。疲れというか、身体の重みというか、そういった背負ってる荷物の重みの感触に直接作用させるってところが、如何にもな感じになってしまうのだなあ。酒について色々書いてると、どうしても、今一時的に消失しているけど本当はものすごく重々しくて汚くて鬱陶しいこの私の身体みたいなものが背後にちらちらと感じられてしまって、書いていて、それがとても、なさけないことに感じてしまうのだ。何を書きたいのか、自分の身体的な感触を描きたいのか、自分の酔って信頼に足らない知覚の不安定な面白さを面白い風な按配で描きたいのか、でもいずれにせよ、結局はそういうのがとてもつまらなく思えてしまう。大体、酔ったときの出来事と、酔いが醒めた後の出来事とふたつないと何も面白くないでしょうが。いや例えばの話、色々な諸条件が、すぱっと一時的にキレイに見事に消失しています感が、鮮烈にあらわれていれば、まだ結構いいかも、とか思えるんだけど、でもまあ難しいだろうな。とか思って、ぐちゃぐちゃと書いていた事をみな捨てた。