男子


座席の端に寄りかかっている高校生男子。履き潰す寸前のぼろい革靴を片方だけ脱いで、くるぶし下くらいまえの丈の白い小さな靴下を座席に乗せ、立膝を突くような格好でふんぞり返っている。筋肉や腱が透けて見えるかのような薄い表皮のなめらかな向こう脛を見せつけている。痩身。小麦色の肌。頬骨や鼻梁の肌の張りと鈍い光沢。身体のねじれに引っ張られたかろうじて上半身を包むシーツみたいな白いシャツ。グレーの制服ズボンはわざわざ腰骨の位置にまでずり下げられて、わき腹から下腹部にかけてを白く薄いシャツが部分的に露出を防ぐべく覆う。膝にのせた腕が力を抜いてまっすぐ前面に投げ出されて、繊細な筋の走った手の甲が死体の手のようにぶらりと五本の指をうなだれさせて下向きに垂れ下がる。水平な顎の線をくっきりと見せ付けるように、頭部全体をこころもち上に向けて、目線を向かいの窓ガラスの上部あたりへ。ぼんやりと見るともなく見ている。だらしない身体の所作の、行儀の悪い、幼くて狭量な、聞き分けのない、愚かで低脳な、媚びて甘ったれた、狡猾で卑怯な、絶望的なまでに凡庸な者。男子。そのような態度で周囲に自分を見せ付けることをちゃっかり計算に入れている浅ましさ。しかしそれらすべてひっくるめても、その幼い自尊心が満たされるか否かの場とは別の空間において、ふつうに彼の外見は魅力的なのであった。如何にも高校生な、如何にも十代の眩しさに魅了される。格好付けてるバカがちゃんと格好良いと見る側も救われる。