社長


世の中の、会社経営している人って、どんな理由で経営を、いったいどういうモティベーションでやってるんだろうね?もちろん夢と希望が、最初はいっぱいあっただろうし、大成功や大失敗もあっただろうが、そのどちらでもない人なら、まあただひたすら月日が過ぎて、あくせくと働いて、気付けば15年とか20年が経過していて。今月と先月と何の変化もないし、不安は常にあって当面極端に暗い見通しはないしもちろん明るい見通しもなくて。要するにやり続ける限りずーっとこのままが続いて何にもない。灰色のトーンが続く。灰色って時間も空間もない。量でもない。単に灰色。灰色って、なんだろうか?抽象画みたいなものだろうか?灰色って、この世には存在しないあり方だよな。まあ、水彩の絵の具の灰色の、娘が学校の宿題でポスターカラーで画用紙をムラなく灰色に塗ってたのを見て、それを見てたらすげえ気が滅入ったんだけれども、でも明日からも、たぶんずっと画用紙にムラなく塗られた灰色で、それはおそらくたぶん本当にそうなのだ。ずーっと、このまま。来月の資金繰りがどうしようもなくなるとか売り上げが壊滅的に下がるとか、また来年か再来年あたりになってそんなことが仮にもし起きたら、そのとききっと俺はそれが微妙にうれしいと思うかもね。いよいよ何かが始まるのかと思っちゃう。もういいよ、もうトドメさしてよって、無意識のうちにいつも思ってるのかもしれない。ずーっとこのままの、えんえんぬるま湯の、作り笑顔の、社交辞令のご挨拶の、でもまあなんか、それももう何もかもがつまんねえなと最近は思い始めている。なんかもっと、奥底まで届いたくらいの、駄目な感じの方が、いっそのこといいんじゃねえかと。なんでこんなろくでもない中途半端な、中くらいの位置をがんばって維持してんのかと。その意味が自分でさすがに、よくわからなくなってるところはある。元々、自分はナマケモノで、人の指図も受けたくないし、自分のやり方で自由にやりたくて、それでかつ、なるべく、できるだけラクしたいという、全体的にはそういうモチベーションで、十何年前かに起業して今も社長やってるんだけど、最近はそれが倒錯してきて、ほんとうは全然ナマケてないのに、これがナマケだ。これが俺本来のやり方だっていう思い込みの方が勝ってるんだよね。で、結果的には全然上手い事いけてない。単にカツカツ愚鈍に働いてるだけで、やわらかさもしなやかさもない感じになっちゃってる。なんか、これならもういっそのこと…っていう気分も、まあなくはない。あーあ。つまんないな。節電とかほんとうにクダラナイ。明日は全フロア18℃に設定してやるか。キンキンに、ガンガンに冷やして、社員全員、女とかみんな身体壊すと面白いな。飲み会も最近はつまんないしな。朝でも夜でも真昼でも春でも秋でも真冬でもつまらない。もうどこかで誰かと恋でもしようかって感じだな。でもそれもつまんないな。