五十歳


しかし、あれから十年が過ぎたとは驚きだ。今日、ついに五十歳になった。あっという間だったな。この十年、何をしてきたのか。何もない。まったく何も変化なしである。自分が五十歳だという実感はまるでない。いや、あるにはある。五十歳の誕生日を迎えたのだから、自分は今、五十歳だ。それは充分に納得できる。でもそれが丸ごと、自分の中でちゃんと定着してないというかなんというか。


まあそんなことはどうでもいいだろう。この十年何をしてきたのかと言うと、ほとんど何もしてないけど、でもまあこうして、この厳しい世の中で、どうにか今までと同じように暮らしてこれただけでも、なかなかすごいことだ。世間の風は相変わらすの冷たさ世知辛さで、今後も一寸先は闇で、何があるかわからないけど、まあ今まで生きては来たという。なんだか、別に何も記憶に残るようなこともなく、読んだ本の事とか、思い出といったらそのくらいしかないかなあ、とも思う。でもまあ、引き続き、あとこの先の十年も、いまから六十歳くらいまでは、まだ変わらず、昨日までと同じように、ずっと変わらずだらだらするつもり。六十歳を過ぎてもそうだな。なるべくだらだら。一応そのつもりではいる。