雨上がり


旅館で、夫婦で揃って温泉行くじゃん。そのときいっつも鍵どうする?男の人ってお風呂早いから、家のダンナもちゃっちゃと洗ってすぐ出てきちゃうんだけど、だから早いと思って、部屋の鍵持っててって、ダンナに預ける?そう。ダンナに預けとくでしょ?だよね?でもそうすると、私もそうだけどダンナも意外と結構長くて、私の方が早く出ちゃうみたいな。それでやだどうしようみたいな、最近ってそういう感じ多くありません?やっぱ歳?男の人もお風呂長くなってさあ。もうやだまだ入ってるのー?お風呂長くなって、やれやれ、ふー、みたいな感じで、けっこう思ったよりも長く入ってるのよね。でしょ?そうそう。だから歳だよね。年取ると長いのよ男もお風呂。


終電で最寄り駅に着いて、夜風がとても気持ち良いのは酔っているせいもあるだろうけど、程好く冷えた気温と、雨上がりの濡れた路面が外灯やネオンを反射して全面ぬらりとした艶で光っているのの上を歩いていることの気分の良さでもあったろう。


公園のとおりを歩きながら上を見上げて、外灯に背後から照らされた桜の木が、いきなり咲いているように見えたのだが、よくみると葉が七割か八割がた、紅葉していて、その色で、そう思い違ったのだった。こうして書くとまるで嘘のような、そんな見間違うか?という感じかもしれないが、一瞬ほんとうに、花が咲いているように見えたのだ。金髪に染めてきたと思ったら白髪だった、みたいな間違いだ。酔ってるからそう思ったのでは?とも言えるかもしれないが、仮にそうだとしても、これを書いてる今も酔っているのだから、それが酔っていたかどうかは現時点ではわからない。というか、酔っているときに見たものを酔っているときに書いているのだから、条件式としては整合するわけだ。